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パパの子育て体験記
理論派・実践派、各界の著名人が、それぞれの「男の子育て参加」実体験を率直に語ってくれました。
見返すべき存在としての父親像に徹してきた。

千 宗守 (茶道武者小路千家家元)

PROFILE(せん そうしゅ)
1945年京都府生まれ。70年慶応義塾大学法学部卒。同大学院美学美術史専攻修了後、京都に戻り家業に専念。欧米各国でも茶の湯や点前披露を行う。89年武者小路千家14世家元を継承し「宗守」を襲名。千利休に始まる400年以上の道統と血統を受け継ぐ。著書は『利休とその道統』『雪間の草』など多数。

千 宗守

 当家には、「若いうちは、茶の湯以外の広い世界を知れ」という伝統があります。息子はそれにのっとってほっておいたのですが、小さいころからお茶の世界、そして仏像が好きで、ほかの子が自動車の名前を覚えるようにして、仏像の名前を覚えていったのです。

 さらに昨年の夏、二ヶ月間、厳しいことで知られる比叡山延暦寺の修行に入り、最後まで頑張りました。帰宅後、母親には「苦しくなって途中で帰ってきたら、おやじに『ほら、見ろ』と言われる。それが悔しいから頑張った」と打ち明けていたようです。

 それを聞いて、私の子育ては成功した、と思いました。私は、「物分かりがいい」と言われるよりも、「見返してやる」と言われるくらいうっとうしい存在でありたかったのです。それが、子どもの成長の糧になるからです。

 これは多分に、私に対するおやじの影響があります。おやじは筋金入りのかみなりおやじで、茶の湯の世界に入ろうと決心したのも、「おやじより立派になってやる」、それしかなかったのです。しかし、今日の私があるのは、あのおやじのおかげなのです。

 息子に比べ娘は大変に活発で、仏像の絵ばかりかいていた息子に代わって、私とキャッチボールをしていました。学校を出たら、われわれの世界とは一番縁遠い世界への就職を望んでいましたが、それが実現し、現在はテレビ局に入っています。茶道の家元のような家に育つと、人からあいさつしてもらって当たり前で、なかなか自分からあいさつしないようなことにもなりかねません。しかし他人様から、「そつなくあいさつしてくれます」と聞くと、娘なりに社会人としての素養を積み重ねているようでうれしいですね。

 私にとっての子育ては、実は、この二人合わせても二割くらいというのが実感です。家元というのは、茶道を広めることと同時に、有能な職業茶人を育てることも求められ、住み込みの者を含め、わが家には多くの弟子たちがいます。私の子育ての八割は、この「弟子育て」だった気がするのです。しかし、あいさつの仕方など、弟子たちへの指導を間近に見聞きし、子どもたちへのしつけにもなったようです。職住一致のなせる業でしょう。
 今後、娘には「自分の幸せとは何か」ということをよく考えてほしい。あくまで個人の立場で考えればいいでしょう。

 しかし家を継ぐことになる息子には、私が祖父の高弟から教わったこんな言葉を贈りたい。「家元として迷ったときは、全社中が、自分に対して何を期待しているか、その原点に返ってほしい。決して自分の都合だけで走らないように」−。われわれのお茶は趣味ではなく、職業です。ましてや息子は、職業茶人の代表になるのですから。この言葉を決して忘れず、忘れたときには、家も滅び、道も滅び、自分も滅ぶ−と、伝えていきたいと思います。

資料:月刊こども未来

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