【風邪】
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ウイルスや細菌の感染によって鼻やのどの粘膜に炎症を起こすものです。鼻・咽頭炎とか上気道炎ということもあります。鼻水や咳がでたり、熱が出たりします。子どもの発熱原因として最も多いものです。
症状の程度や経過は様々です。軽い咳と鼻水で終わってしまうこともあれば、気管支炎や肺炎を起こすこともあります。インフルエンザも風邪の一種ですが、他のウイルスによる風邪に比べ伝染力が強く流行を起こすことと、症状もふつうの風邪に比べて強いことが特徴です。
少しの咳と鼻水であれば急いで診察を受けることはありませんが、熱があったり、咳や鼻水が増してくるようなときには受診して下さい。
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風邪の治療の考え方:
ウイルス感染なので根本的な治療法はありません。病院では症状に応じて、その症状を和らげる薬が処方されます(対症療法)。咳や鼻水などの症状を和らげることにより、食事や睡眠ができるだけとれるようにして体力を保ち、自分の力で回復するのを手助けします。これは風邪に限らず、他のウイルス感染症の治療についてもあてはまることです。細菌の感染が同時にあると考えられるときや、疑われる場合には抗生物質が処方されます。
インフルエンザについては、有効な薬が開発され、日本でも使用できるようになってきました。現在は原則として大人と年長児だけ使用出来ますが、近々、乳幼児にも使用できるものが発売されます。
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家庭での対処:
安静、食事(ミルク)、保温がポイントです。
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安静:
ゆっくりと静かな環境で休ませるのが第一ですが、ハイハイや歩行ができる年齢のときには、寝かそうと思ってもなかなかじっとしていないこともあります。動けるということはまだ元気があるということですから、無理に押さえつけて寝かせておく必要はありません。少し相手をして遊んでやってもいいでしょう。人込みに連れ出したり、多くの人に会わせたりするのは控えましょう。
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食事(ミルク):
普段と変わりなく食べたり飲んだりできるときは問題ありませんが、高い熱や、咳、鼻水が多いときはミルク飲みや食べる量は減るものです。ミルクはあまり飲まなくても、湯冷ましや番茶などさっぱりしたものは飲むことがあります。試してみましょう。果
汁や子ども用のイオン水を飲ませてみるのもいいでしょう。一度に沢山は飲めなくても、少量ずつ頻回にミルクや他の水分をとらせるよう努力してみて下さい。
栄養はとらせたいのですが、無理に飲ましたり食べさせたりすることは出来ません。最低限水分をとらせ、脱水症にならないよう努めて下さい。
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保温:
熱の項を参照して下さい。部屋は乾燥しないように気をつけます。 |
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【突発性発疹】 (とっぱつせいほっしん)
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高い熱が3〜4日続き、熱が下がる頃、あるいは熱が下がった後に顔や体全体に赤い発疹が出る病気です。発疹は2〜3日で消えます。生後4カ月から1歳までにかかることが多く、はじめての発熱の原因として多いものです。咳、鼻の風邪症状や下痢を伴うこともあります。また、乳児期の熱性けいれんの原因としても多い病気です。
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対処:
熱に気が付いたら、まず診察を受けることが必要です。はじめての発熱の場合、小児科医はこの病気を疑いますが、診察上はのどが赤いだけなので、風邪と診断することが多く、熱が下がって発疹が出てはじめて突発性発疹と確認されます。ウイルス感染症なので根本的な治療はなく、症状に応じた薬が処方されます。
家庭での対処は風邪に準じて行います。
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【乳児嘔吐下痢症(ウイルス性胃腸炎)】
(にゅうじおうとげりしょう)
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ウイルス感染による胃腸炎です。突然何度も吐きはじめ、その後下痢がはじまります。うつる病気で冬場に流行があります。ロタウイルスによるものは白っぽい下痢便になるので白色便性下痢症ということもあります。便は水様で10回以上になることもしばしばあります。乳児ばかりがかかる病気ではなく、幼稚園や学校で流行することもあります。
最初に何度か吐きますが、吐いた後すっきりして少しずつ水分がとれるようになることが多いです。しかし、頑固でなかなか水分摂取が出来ないこともあります。下痢は3、4日〜1週間で良くなって来ることが多いのですが、なかには1週間以上続く場合もあります。嘔吐が頑固で水分がとれない場合や、下痢がひどい場合には脱水症を起こし、外来や入院して点滴が必要になることもあります。
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対処:
吐いて下痢をするときは脱水症を起こすまえに医師の診察を受け、吐き気止めや下痢の薬をもらうことが原則ですが、この病気の治療のポイントは、家庭での水分補給と段階的な食事療法です。最初は胃腸に負担のかからない水分や食事を与えます。限られた期間なので、栄養面には目をつぶり、水分補給につとめます。
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嘔吐下痢症のときの水分補給と食べ物:
吐き気が強く水分補給ができないときは、しばらく何も与えません。吐き気がおさまってきたら少しずつ水分を与えてみます。最初に与える水分は胃腸への負担の少ない湯冷ましや番茶を用います。子ども用のイオン水や病院からもらったイオン水を使ってみるのもいいでしょう。
下痢があるときは柑橘系の果汁は避けた方がいいでしょう。吐き気の程度や体格にもよりますが、最初は20〜30mlからはじめ、吐かなければ間隔を置いて少しずつ量を増やしていきます。 吐くようであれば、時間をおいてまた少量を試してみます。どうしても吐いて水分がとれないときは、もう一度診察を受ける必要があります。
ある程度まとまった量の水分がとれるようになったら、母乳栄養の赤ちゃんには母乳を、人工栄養児であれば、最初は薄目 (1/2〜2/3) のミルクを試してみます。嘔吐がなく、下痢も良くなってきたら母乳栄養であれば飲めるだけ、人工栄養であればふつうの濃さに戻していきます。離乳食がはじまっていても、最初の半日から一日は無理に食べさせないで下さい。
嘔吐がなく、下痢も水様便からドロドロの便になってきたら、前段階の離乳食から試してみます。下痢が長引くようであれば、医師から乳糖が入らないミルクを勧められることもあります。
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【腸重積】 (ちょうじゅうせき)
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腸が腸(多くは小腸の終末部分が大腸に入り込む)の中に入り込み、入り込んだ腸が圧迫されて通過障害(腸閉塞)を起こす病気です。
生後半年から2歳までがこの病気が多い年齢です。主要な症状は嘔吐と腹痛と血便です。乳児は腹痛を訴える代わりに泣きます。泣き方は間欠的啼泣といって、強く泣いた後、泣きやみます。泣きやんだときはぐったりとして元気なく、顔色も青白くなります。泣いているとき膝を抱え込むように体をくの字に曲げることもあります。これを繰り返します。
血便は最初はないこともしばしばで、病院で浣腸してはじめて気づかれることも少なくありません。血便は、便全体に血液がべっとり混じったものです。
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対処:
腸重積は緊急を要する病気です。時間が経つと、圧迫により入り込んだ腸が血液の循環障害を起こし、もろくなって破れることもあります。この様な症状があるときは速やかに医師の診察を受けて下さい。
病院では、浣腸をして血便の有無を確認したり、超音波検査をします。最終的に腸重積が強く疑われるときには確定診断と治療をかねて、肛門から空気やうすめた造影剤を入れて、この圧力で入り込んだ腸を戻します。
発病してから時間が経ったものや、複雑に腸が入り込んでいる場合には、空気や造影剤の圧力で戻らないこともあり、このときは外科で手術をします。
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【肥厚性幽門狭窄症】
(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)
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胃から十二指腸に移る幽門部という部位の周りの筋肉(輪状筋)が異常に厚くなって内腔を圧迫し、胃から十二指腸へのミルクのとおりが悪くなる病気です。ミルクが胃から先に進んでいかないので勢いよく吐きます(噴水様嘔吐)。
生後、2〜4週頃から嘔吐の症状がはじまります。ミルクを飲んだあと数十分で勢いよく吐きます。吐く回数は日ごとに増えていき、飲むたびに吐くようになります。最初は元気もあり、ミルクを吐いた後もお腹を空かせてガツガツミルクを飲みますが、日が経つにつれ嘔吐の回数が増え、脱水症状でぐったりしてきます。体重増加も悪くなり、減少するようになってきます。
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対処:
生後2〜4週に始まる噴水様嘔吐で、だんだん回数が増えてくるようなら早めに医師の診察を受けて下さい。赤ちゃんはよく吐きますが、問題ない嘔吐は体重の増えも良好です。一方、病的な嘔吐は体重増加不良を起こします。吐き方が気になるときは体重の増加をみることが1つのチェックポイントです。
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病院での対処:
診断を確定するために診察をして超音波の検査をします。また、造影剤を胃に注入して胃から十二指腸への通
りや、形をみます。治療は軽症なものであれば薬物療法で良くなりますが、これが無効であれば外科的に手術をします。
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文責/日本小児保健協会 |