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■生後6カ月でのおむつはずし
「中国では、赤ちゃんが生まれてから6ヵ月くらいでおむつがはずれるんですよ」
NHKの子育て番組に出演していた時のこと、ゲストの中国人の母親がそう言ったとたん、TV局には全国の視聴者から問い合わせの電話が鳴り響いていた。
「わたしが子育てをしたときは、1歳のお誕生日までにはとったものですが、今は2歳になってもまだまだとれないので参考にしたい」とか、「中国人は“気”か何か特別な方法を使うのかしら?」などなど。その多くは、おばあちゃんからの電話。
番組終了後、問い合わせをしてくれた視聴者に一軒ずつ電話をかけて対応していた私は、受話器をにぎりながら、「これは、自分で実際に見てこなくてはいけない」と思い始めていた。
思い立ったら、即実行。ビデオを片手に中国に出かけるまでは、それからほんの数日のことだった。
■ハイタッチだった、中国の「五感育児」
たしかに、その頃の中国家庭や保育所では、生後6カ月の赤ちゃんのおむつはすでにはずれていた。
中国の布おむつは、昔の日本もそうであったように、着ざらしの木綿やネル地を細長く切ったもの。それを赤ちゃんのお股に、前後に長くはさみ、パンツのゴムだけをウエストにはめて、そこにひっかけてとめている、じつにシンプルな股おむつの原型である。
しかも、おむつカバーをしないので、おむつ替えを頻繁にしなければ、寝具も洋服も濡れてしまうことになる。つまり、一日の生活リズムの中で、いつ赤ちゃんに尿意があるのかをお世話をしている母親やおばあちゃん、保育所の先生などがしっかりとらえていないといけない。こんなハイタッチな「五感育児」を、当時の中国で目のあたりにしたのだ。
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山岡 テイ(情報教育研究所代表)
少子化、情報化時代の母親達の子育て観や教育意識などの実態調査を全国、首都圏、海外で実施している。取材や調査研究で訪れるいろいろな国々の音楽を聴きながら、その民族料理を作り、みんなで食卓を囲むことが楽しみ。
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都会では、なくなりつつある中国の
「股われパンツ」 |
山岡テイさんとは
アパレルメーカーのワールド社員から出発し、ファッション界で活躍し、ドイツに留
学。帰国後、イベントの制作や子育て調査をしていたかと思うとオーストラリアに滞
在。現在は学校や病院など、いま注目される臨床現場でのカウンセリング研究を行う
など、さまざまな活動の顔をもつ山岡さん。
1985年「4500人の育児期の母親意識調査」
1987年「6000人の育児用品白書」
1991年「育児白書」
1994年「育児情報に関する総合質問紙調査」
1996年「幼児のしつけ・教育観調査」
1998年「子育て生活基本調査」
2000年「育児不安と育児情報に関する子育て調査」
などの他多くの監修執筆と精力的に研究の成果を発表。
Q アパレルのご出身なのですね。
――ワールドの企画開発室で販売促進・広報・企画制作の仕事をしました。イベントや新
規事業も多く手がけましたね。大勢のスタッフと一緒にするダイナミックな仕事の進
め方を覚えた時期でした。
Q 1983年に情報教育研究所を主宰されましたが。
――ドイツのボン大学大学院に留学したのを契機に、教育や生活に関する官公庁から委託
された国際比較調査を始めました。調査研究が本当に性にあっているというか、生涯
のテーマとしてやっていきたいと、このころ固まってきました。
Q 海外滞在も頻繁ですが。
――この調査や取材が必要だと思うと、いてもたってもいられなくて、すぐに飛んで行っ
てしまいます。骨の髄まで現場主義ですね。どこの国でも手伝ってくれる現地の友人
がいるのが心強いんです。
Q 最近の関心事は?
――在日外国人の生活意識調査を11カ国語に翻訳したアンケート用紙で実施中です。日本
では近い将来、他のアジア人とどう共生するかは、大切な問題だと思っています。
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