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1 .子どもの事故の実態 |
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子どもの健康を考える場合、事故の問題は避けて通ることはできません。事故をどのように考え、予防するにはどうすればよいかについて述べてみたいと思います。 |
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1−1 子どもの死因の第1位は不慮の事故 |
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1960年以降、わが国では、0歳をのぞいた小児の死因の第1位は不慮の事故となっています。昨年も 1〜19歳の死因の第1位は不慮の事故であり、今年も、そして来年もそうであり、ずっとこの状況は続いていきます。
成人の死因の第1位である「悪性腫瘍」に相当するのは、小児では病気ではなく事故なのです。すなわち、事故は、子どもの最も重要な健康問題となっているのです。 |
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1−2 事故の正確な発生数はわからない |
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事故はあまりにも多発しているため、死亡をのぞくと、はっきりした事故発生数は不明です。推計された数値をみると、たとえば1〜4歳の年齢層では、不慮の事故による死亡1件に対し、入院を必要とする事故は40倍、医療機関の外来受診を必要とする事故は4000倍、家庭で処置を必要とする事故は10万倍、家庭で処置の必要がないような事故は19万倍とされています。さらに「ヒヤッとしたエピソード」まで入れると、気が遠くなるほどの事故が日々発生しているのです。
医療保険のデータから、1年間に、各年齢層の子どもが不慮の事故のために入院する頻度は約200人に1人、不慮の事故のために外来を受診する頻度は、0歳では約4人に1人、1〜4歳では約2人に1人、5〜14歳は約3人に1人と推定されています。
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1−3 事故は必ず起こる |
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これらのデータからすると、ほとんどの子どもは事故に遭っているのです。子育てをした人なら、子どもの事故で医療機関を受診した経験があるはずです。事実、事故の話をすると、ほとんどの人が「うちの子も、小さいころに同じような事故をして、慌てて病院に連れていきましたよ」と話されます。このように、毎日の日常的な事象であり、膨大な数が発生し、ほとんどの子どもが経験するもの、それが「事故」なのです。 |
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1−4 子どもが事故に遭いやすいのはなぜ? |
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子どもの事故は、発達に伴って起こります。視点を変えれば、子どもは日々発達するために事故が発生しやすくなるのです。老人も事故に遭う確率が高いのです。
なぜ、老人や子どもに事故が多いのでしょうか? その理由は、人々が暮らしている社会、生活場面の構造が、健康な成人に合わせてできているからです。成人の機能まで達していない子ども、あるいは健康な成人の時期にもっていた機能が退化した老人は、どちらも成人の生活しているレベル以下の生活機能しかなく、そのために事故に遭遇する確率が高くなるのです。 |
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1−5 事故は子どもの重要な健康問題である |
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事故は健康を障害する事象として科学的に分析し、具体的な予防策を考える必要があります。健康問題として取り上げる場合、1)重症度が高い事故、2)発生頻度が高い事故、3)増加している事故、4)具体的な解決方法がある事故、について優先的に取り組むべきです。口先だけで事故予防と言っていても意味はありません。具体的な予防の取り組みによって、事故の重症度が軽減した、あるいは事故の発生数が減少した、という科学的な事実のみが事故の予防として評価されるのです。
事故予防の指導は、保護者が実行可能で、かつ科学的に有効とされている予防策を指し示し、保護者がその予防策を実行するという行動変容が重要となります。この行動変容があってはじめて、事故は予防されるのです。 |
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1−6 事故に対する認識を新たに |
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子どもの健康にとっての最大の敵は「不慮の事故」であることを再認識する必要があります。子どもの発達にともなって起こりやすい事故のパターンは決まっており、それらに対する有効な事故防止法もある程度わかっています。
子どもの健康を守り増進する、また支援する仕事をしている人達は、積極的に事故予防の活動を展開する義務があると私は考えています。 |
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文責/日本小児保健協会 |