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3 .児童・生徒の食育 |
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3−5 肥満
肥満を予防する食生活は
生活習慣病を防ぎます |
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生活習慣病は、自覚症状がないまま動脈硬化が促進され心筋梗塞や脳梗塞を起こすので、乳幼児期から正しい生活習慣を身につけることが大切です。特に早い時期からの肥満は生活習慣病に移行しやすいので、それを防ぐには、子どもの成長をしっかり把握する必要があります。身長と体重を定期的に記録して、その成長曲線を時々確認します。気がついたら体重が急に増えていたというのでは困ります。子どもは、急に動くのが苦手になったり、太ったことが劣等感につながったりします。友人や家族から身体的特徴をからかわれたりすると、そのストレスからさらに食べてしまうという場合もあります。
そんなとき、家庭では、献立の工夫が必要です。噛み応えのある料理や低エネルギーの食品を多く組み合わせるなどして、見た目の量を減らさないように配慮し、食事中は家族で会話を楽しめるようにしましょう。
子どもの生活習慣全体を考えることも必要です。朝型を基本とし、自然に外遊びが楽しめるような働きかけをしましょう。食事は外食が多くならないように、間食は親がきちんと量と時間を決めましょう。
小学校高学年や中学生になって、運動部に所属するようになると、子どもの肥満は解消する場合が多いのですが、それまでの時期は、生活習慣の確立、子どもの自立に向けての大人のかかわり方が重要です。 |
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3−6 ダイエットと神経性食欲不振症
適正体重を知りましょう |
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小中学生の女子に、平均の体重では太りすぎていると感じる人が多くなり、体重を減らそうと、必要でないダイエットをする人がいます。最近では、それは男子にもみられます。この場合、多くは、食事を減らして栄養状態がアンバランスになっているので、家庭や学校での食育・健康教育が大切です。
成長期に極端なダイエットをすることは、内臓に負担をかけるだけでなく神経性食欲不振症につながる可能性もあります。神経性食欲不振症は、自分の身体認識に誤りがある(太っていないのに太っていると感じる)病気で、極端な低体重、無月経、骨がもろくなるなどの症状が現れます。やせたいがために極端な食事制限をするほか、強迫的な運動をしたり、食べ物を吐いたり、下剤を使ったりするような不自然な方法が使われることもあります。
この病気は、乳幼児期から家庭内に不安や緊張があり、自分の要求を出さずにいい子として成長してきた子どもに多くみられます。自己確立の時期である思春期に達し、自分を殺してきたそれまでの生き方を続けるのが困難になり、ダイエットで対処するようになるのです。この傾向は、もともと、過度に几帳面なところがある人に多いようです。
子どもが自分自身を大切にできるように、周りが支えなければなりません。 |
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3−7 スポーツドリンク
必要なときだけ飲みましょう |
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スポーツをするとき、水と電解質を補給するには、ジュースや炭酸飲料類は不適当で、電解質飲料(スポーツドリンク)が適しています。
児童や生徒は、腎臓の機能もほとんど成人並みに発達しているので、体液の電解質バランスの調整も自然にできるようになっています。ですから、普通の渇きに対しては水やお茶で十分です。しかし、激しい運動や嘔吐・下痢、発熱などで軽い脱水がみられる場合には、水だけを大量に飲むと電解質のバランスが乱れます。このような場合には、スポーツドリンクを飲むのがいいでしょう。脱水が強い場合は、スポーツドリンクだけでは不十分ですから、必ず病院で受診してください。
日常的に果汁や炭酸飲料などの清涼飲料水を飲む子どもが多くなっていますが、1日2〜3リットルも飲む児童や生徒、若い成人の間で、最近、急性糖尿病の症状を発生した例が報告され、「ペットボトル症候群」として話題になりました。
電解質も摂り過すぎることも害はあります。だらだら水代わりに飲んでいると虫歯になりやすいのです。日常は水やお茶を飲むようにするといいでしょう。 |
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3−8 栄養補助食品(サプリメント)
本来の食生活を正しいものに |
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加工食品や冷凍食品、外食に頼ることなく、1日3食、バランスのいい食生活を心がけていれば、微量栄養素も過不足なく摂れるはずです。しかし、現代の食生活では、理屈ではわかっていても、現実にはなかなか困難です。そんな現代、健康雑誌やメディアは、健康の不安をあおり、健康食品やサプリメントを推奨しています。サプリメントはコンビニエンスストアでも自由に購入できますし、「特定保健用食品」もたくさん売り出されています(「特定保健用食品」とは、特定の成分に健康の維持増進に役立つ作用が科学的に証明されている場合に、厚生労働大臣が表示を認めた食品)。サプリメントや特定保健用食品は簡単に手に入るものですが、身体にいいからとそればかりに偏る食べ方は感心しません。
最近は、「何を食べても味がわからない子」「朝礼でよく倒れる子」などもいて、微量栄養素の不足による病気が報告されています。味がわからないというのは、亜鉛の補給に欠かせない米や小魚などを食べないことが原因です。倒れる原因は鉄欠乏性貧血で、鉄分が不足しています。
しかし、逆に、ビタミン、ミネラルの一部には摂りすぎると過剰症になるものもあります。サプリメントは、本来の食生活を正しいものにした上で、補足的に使うものです。サプリメントに頼ることなく、食事を噛むこと、味わうこと、楽しむことを子どもに教えましょう。 |
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3−9 知的障害をもつ子どもの食事
根気よく対応しましょう |
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知的障害をもつ子どもの場合には、未熟な食べ方と肥満が問題になります。このような子どもに対しては、健康面はもちろん、社会への適応力を高めるためにも、根気よい対応が望まれます。
知的障害をもつ子の肥満は、ストレスや運動不足、筋緊張の低さ、体温などと関係が深いのですが、未熟な食べ方も原因の一つと考えられます。噛むのが苦手、飲料で食べ物を流し込む、硬いものや筋っぽいものは嫌い、丸飲み、早食い、嚥下の未熟さなどが、肥満の原因となります。
口の閉じ方が悪い子に対しては、口の中を観察することも必要です。発語が少ない、甘い飲み物やおやつをダラダラ摂る、口の周りに触れるのを嫌い歯磨きを嫌がる。こんなことが重なると、重度の虫歯や歯肉炎、感染症にかかりやすくなり、摂取する食物の幅も狭まってしまいます。
これらの問題に対応していくには、まず、子どもを空腹で食卓につかせることです。かわいそうだからと、特別なメニューにしないこと。「この子は食べられないのだ」と決めつけてはいけません。舌や唇を動かす練習をすることは、食事のためだけでなく、発音の明瞭化にもつながります。子どもは、いつか何かの拍子に食べ始めることがありますから、それを信じて、食べる機能を伸ばすために根気よく対応することです。 |
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文責/日本小児保健協会 |