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10 .スポーツ外傷とその予防 |
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スポーツには、学校の教科として行うスポーツと、個人的に行うスポーツがあります。スポーツ外傷は非常に多く発生していますが、その死亡率は低く、15歳未満ではスポーツに関連した死亡はまれです。
アメリカからの報告によると、スポーツに関連した死亡1件に対し、救急外来で治療を必要とする外傷は約5万件発生しているとされています。スポーツ外傷の頻度は男児が女児の約2倍となっており、年齢とともにその頻度は増加します。急激に増加するのは12歳ころとされています。スポーツ外傷の約半数はチームスポーツが原因となっています。
生命を脅かすようなスポーツ外傷は、頭部や頚部、または胸部に過剰な力が加えられた結果生じますが、最も頻度が高い外傷部位は四肢です。 |
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10−1 学校管理下のスポーツ外傷 |
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スポーツ外傷のまとまったデータとしては、日本スポーツ振興センター(旧・日本体育・学校健康センター)から学校管理下の死亡・障害事例として年報が出ています。 このデータを見ると、体育的活動中の事故死は1年間に10例(2003年度)でした。
死亡は課外指導時が多く、ほとんどが中学生、高校生で発生していました。部活動としては柔道部6件、ラグビー部3件、剣道部、相撲部、ランニング、山岳部、バレーボール部、水泳部、ヨット部がそれぞれ1件でした。
災害共済給付が行われたスポーツ外傷について各スポーツごとにまとめられていますが、傷害の部位としては、目や歯が多くみられています。 |
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10−2 スポーツ外傷の予防 |
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前提として、体格や能力に応じたスポーツを選択する必要があります。スポーツの種類によって、どのような外傷が起こりやすいかがわかっています。
まず、環境の整備が必要です。スケートボードやローラースケート、スキーの外傷は、地表面のでこぼこが外傷の大きな要因であり、その整備が必要です。体育館の壁にある突起物は除去し、競技している子どもが走ってきて壁に衝突する可能性があるところには壁に安全パッドを貼ります。
フットボールなどのフィールドスポーツでは、試合を行うフィールドとベンチなどとのあいだの緩衝ゾーンを広くとり、競技者が走って入り込んできてもぶつからないようにします。運動用具は安全性が考慮されたものを使用し、施設や設備や用具は定期的に点検します。
競技者の安全確保のために装具をつけます。野球では、バットやボールによる頭部への打撃を予防するために打者はヘルメットをかぶります。
スキー、スケート、スケートボード、キックスケーターをする場合は、ヘルメットの着用、肘・膝のプロテクターを使用します。球技・団体競技、格闘技をする場合の歯の傷害を防ぐためには、マウスガードを使用します。アイスホッケーでは顔面防護具、スカッシュなどラケットを用いるスポーツでは目の防護具、レスリング用ヘッドギアで耳を防護します。
また、試合中に脳震盪を起こした疑いのある選手は、試合に戻ってプレーをさせてはいけません。 |
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10−3 熱中症とその予防 |
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ヒトの体温は、外界の温度が変化しても一定の値に保たれるよう調節されています。この調節を行っているのは脳の視床下部にある体温中枢というところです。
高温、多湿の環境下で激しい運動をした場合などに、この調節機能が働かなくなると体の中で生じた熱を体外に放散することができず、体温が異常に上昇します。このような異常な体温の上昇と脱水の合併した状態を熱中症といいます。熱中症の「中」は「中(あた)る」という意味で、毒に中(あた)る、すなわち「中毒」と同じ使われ方の言葉です。
日本スポーツ振興センターによると1994年から2003年の10年間に41名(年平均4名)の小中高生がスポーツによる熱中症のために死亡しています。また、熱中症のために医療機関を受診した生徒の数は死亡数の70倍以上と推定されています。
スポーツによる熱中症の予防として、(財)日本体育協会発行の「熱中症ガイドブック」に熱中症予防8カ条:1. 知って防ごう熱中症、2. 暑いとき、無理な運動は事故のもと、3. 急な暑さは要注意、4. 失った水と塩分取り戻そう、5. 体重で知ろう健康と汗の量、6. スケスケルックでさわやかに、7. 体調不良は事故のもと、8. あわてるな、されど急ごう救急処置、となっています。
スポーツは「精神力で頑張る」のではなく、科学的にそして安全を確保しながら行うことが必要なのです。 |
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文責/日本小児保健協会 |