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目次へ 15 . 事故の被害者への援助
   事故のために子どもを亡くす、あるいは子どもが後々まで障害を残すような事故に遭遇する、こんな不幸なことはありません。そのような状況に置かれた人たちは、その後どうしていらっしゃるのでしょうか。
15−1 交通事故の被害家族
   子どもの不慮の事故死の中で、最も頻度が高いのは交通事故による死亡です。横断歩道上で車にはねられて娘さんを亡くされたお母さんは「寝てもさめても、もう帰ってこないという現実を片時も忘れることができません。私たちには一生の間、喜びなんてありません。」といっておられます。(「クルマが優しくなるために」杉田 聡著:ちくま新書、1995年)
 そして、事故の後には、善意であっても家族にとっては配慮に欠けた言葉も多いのです。「交通事故なのだから仕方がない」「加害者も被害者」「保険金が入るからよかった」「まだ他に子どもさんがいるじゃないの」「どう、もう元気になった?」などが実例としてあげられています。(今井 好子:こころの看護学 1:365,1997)
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15−2 逆縁の悲しみ
   逆縁とは、仏教の言葉で、年長者が若い死者の供養をすることで、特に親が子の供養をすることをいいます。悲しみは時間とともに軽減していくのがふつうですが、逆縁の悲しみは経過とともに増強するといわれています。少産少死の時代を迎えた現在、残された核家族に同じ境遇の人は少なく、悲しみを分かち合うことがむずかしいのが現状です。
 突然死の遺族の心理状況には、特有な性質があるとされ、1. 現実感のない状態、感覚の麻痺、迷路の中を歩きまわっている感じ、2. 「もし・・・・してさえいれば」という激しい罪悪感、3. 誰かを非難したい欲求、4. 二次被害:警察、司法、医療、マスコミ、周囲の好奇な目、5. 無力感からくる憤怒感、復讐心、6. 未完結な関係:十分なことがしてやれなかったという悔い、7. 死亡の原因と責任の追及、理解:なぜ死ななければならなかったのか(JWウオーデン)、があげられています。事故で子どもを亡くした親は「否認、怒り、抑欝、あきらめ、そして受容」の道のりをたどらなければならないのです。
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15−3 乳幼児突然死症候群
   乳幼児突然死症候群(英語でSudden Infant Death Syndrome、それぞれの頭文字をとってSIDS)は事故ではなく、健康だった赤ちゃんが突然亡くなる病気です。原因は全くわかっていません。わが国では、1年間に約270人の赤ちゃんが亡くなっています。今まで元気だった赤ちゃんが突然亡くなるという大変ショッキングなできごとで、家族、特に母親の悲しみはたいへんなものです。母親は自分の過失ではないかと自責の念にかられ、周囲から非難の目でみられることもあります。
 欧米では、SIDS家族の会が活発な援助活動をしていますが、わが国においても、1993年2月にSIDS家族の会が発足し活動を開始しました。この活動はすべてボランティアによって行われています。SIDSで子どもを亡くした経験をもつ親が、電話などで両親の話しを聞き、話し合うことで悲しみや悩みを分かちあっています。この活動は全国に広がりつつあり、たいへん大きな力になっています。
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15−4 突然死の子どもの両親への援助活動
    自宅の浴槽で溺れて亡くなった子どものお母さんにどのような援助が可能でしょうか。まず、同じ経験者が話し合える場の設定が必要でしょう。そして、話し合いの中から、必要な活動を展開していただきたいと思っています。
予期しなかった突然の出来事で死傷するという点では、事故、災害、犯罪の被害者は同じ立場にあります。現在、被疑者の人権については取り上げられていますが、被害者の人権についてはあまり取り上げられておらず、その対策の理論や方法も全くといってよいほど確立していません。被害者をさまざまな角度から支援していく体制もほとんどなく、今後は各地域において被害者の援助活動が展開されることを切望しています。
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文責/日本小児保健協会
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